長谷川先生のメール

これまでずっとROMしていましたが、黙っていられなくてメールします。
京都の公立中学校で数学を担当しています長谷川といいます。
長文をお許しください。

大方のみなさんがご指摘のように私も「二次方程式の解の公式を中学校の
指導要領からはずす」という意見には全く賛成しかねます。

というのは、中学校の授業の中でも二次方程式の解の公式を導き出す
一連の授業こそ生徒に数学という学問の本質を理解させ、数学に親しみを
わかせ、全知全能を傾けて問題を解決する喜びを味わわせられる最高の
教材の一つとして大切にしてきたからです。

私の市の使っている教科書では二次方程式は

 x^2=a型 
 (x+m)^2=n型
 x^2+px=q型(平方完成を利用する型)

と羅列されその後に ax^2+bx+c=0 の一般的な解の導き型を記述し
ていますが、私はこれを数学史を軸に有機的に関連づけ、人類の英知を結集
した壮大な一般的な解法へのドラマとして授業をしています。

そうでしょ。 x^2=a は x=±√a と書いてしまえばそれだけですが
そもそも無理数なる数が認められるのに何年もかかっているし、±の一方の
負の数さえ数字の一員になるには相当年月がかかっているんですものね。

平方完成にしてもテクニックとして教えれば終わりですがもともと式にない
(p/2)^2 なる項を両辺に追加して解くという発想に至るまでにはいろい
ろ試行錯誤があるわけですよね。

それらをきっちりとふまえ練習問題もした後、私は「明日は解の公式を作るから
今日はよく寝て明日の授業の前には顔を洗って最高のコンディションで臨め」と
宣言した「解の公式を作る」授業を展開します。きっちり1時間かかります。

が、このように丁寧にステップを踏みながらそれぞれの段階の二次方程式を
解く方法をしっかり理解させ、クラスの全員の力で二次方程式の解の公式を
作り、改めて解の公式で問題を解いてみると、ほとんどの生徒が
「感動した」「解の公式は偉大だ」「アルクワリズミの知恵に敬服した」
「解の公式は本当にありがたい」
などという感想を書いてくれるのです。手前味噌ですが解の公式への授業は
数学だけでドラマチックな感動を与えることのできるすてきな教材なのです。

しかも、この公式を用いて二次方程式を解く計算も1年から丁寧に低位生徒への
手当をしてやることでできる生徒のパーセンテージは激増します。小学校から
いわゆる「できない生徒」への手当を文部省が本気で考えるならば文字通り
すべての生徒に解の公式を理解させ使えるようにさせることは可能であると思い
ます。

問題の本質は、まさにそこにあると思います。
そもそも、学校の「荒れ」やいじめの根元的な原因となってきた「学力による生
徒の振り分け」にまったく目をふさいで低位生徒の学力保証を放置したままで
問題を「生きる力」だの「意欲」だのにすり替えて総合学習や選択教科をとりい
れることで解決しようとするところに指導要領の時間数にムリをきたす根本原因
があると思うのです。

その意味で、上野先生の

> 出来ない方へ皆の学力を揃えて、自ら課題を見いだし、
> 課題を解決できる能力を付けることは自己矛盾です。最低限の
> 基礎学力があってはじめて自らの力で解決できる能力を磨くことが
> 出来るのですから。

というお考えには全面的に賛成します。

結局、数学教育の問題も依然として落ちこぼれ放置の文教政策にあるように
私には思えます。

P.S 現在の学校の評価体制や授業については私のホームページ

    http://web.kyoto-inet.or.jp/people/haselic/

に私の見解を述べていますので参考にしていただければと思います。

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            π-forever  長谷川 幹
              haselic@mbox.kyoto-inet.or.jp
         http://web.kyoto-inet.or.jp/people/haselic
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